映画『私のすべて』

映画『私のすべて』

母として、ひとりで守ってきた”ゆっくりな”息子 思いがけず訪れた巣立ちの季節に心は波立つ―― フランスの新星が描く愛と解放の物語
映画『私のすべて』
第81回ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ部門 正式出品 横浜フランス映画祭2025 上映作品 アンヌ=ソフィー・バイイ(『犬の裁判』共同脚本)初長編監督作品
2026年2月13日㊎よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:アンヌ=ソフィー・バイイ
          出演:ロール・カラミー シャルル・ペッシア・ガレット
          2024|フランス|95分|フランス語|カラー|ビスタ|5.1ch
          原題:Mon Inséparable/英題:My Everything 日本語字幕:岩辺いずみ
          後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
          提供:スターキャット 配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
          宣伝:エスパース・サロウ
          © 2024 L.F.P. - LES FILMS PELLÉAS / FRANCE 3 CINÉMA

Story

パリ郊外の小さなアパートに暮らすシングルマザーのモナは、
発達に遅れのある30歳過ぎの息子ジョエルを女手ひとつで育ててきた。
モナはショッピングモールのビューティ・サロンで、ジョエルは障がい者のための職業作業所で働いている。

互いを支え合い、いたわりながら暮らしてきた二人。
ところがある日、モナは、ジョエルと同じ施設で働くオセアンが彼の子を妊娠したと聞かされる。
二人の関係を何も知らなかったモナは動揺し、母子の絆も揺らぎはじめる――

Introduction

若さや欲望を封印し、歯を食いしばって生きてきたー

人生を息子に捧げてきた女性の心と体の解放にエールを送り、

親と子の新たな人生のはじまりのときを祝福する

横浜フランス映画祭2025にて『My Everything』のタイトルで上映され好評を博した本作は、日本での劇場公開も記憶に新しい『犬の裁判』で共同脚本を務めたアンヌ=ソフィー・バイイの長編監督デビュー作。医療従事者の家庭で育ち、ケアする人とされる人の美しくも葛藤のある関係を間近で見つめてきたバイイが、自ら綿密な取材を重ね、オリジナル脚本に仕上げた。プレミア上映されたヴェネチア国際映画祭では40歳未満の新しい感性を持った若手監督・脚本家などに贈られるオーサーズ・アンダー40賞最優秀監督賞含む3冠を受賞。フランスから現れた新たな才能だ。

突然の子離れを迫られ動揺する母モナを演じたのは、世界的人気を誇るTVシリーズ「エージェント物語」の“ノエミ”役でブレイクしたフランスの人気俳優、ロール・カラミー。モナの息子ジョエルに障がいを持つ俳優としてはじめてセザール賞有望若手男優賞の一次候補に選出されたシャルル・ペッシア・ガレット。ジョエルの恋人オセアンに演技未経験ながら施設での即興ワークショップで見出されたジュリー・フロジェを起用した。

繊細でエモーショナルなアンサンブルで描く、心の旅。人生の分岐点を通過した先に見える景色とは――

Director

監督・脚本
アンヌ=ソフィー・バイイ
Anne-Sophie Bailly

1990年、フランシュ=コンテ地域圏(現ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏)生まれ。舞台や映画で俳優としてキャリアをスタートさせた後、2017年にフランス国立映像音響芸術学院(La Fémis)の監督科に入学。在学中の2018年から2021年にかけて、ドキュメンタリーとフィクション双方で、複数の短編映画を制作。作品には、集団を演出することへのこだわりや、「ケア」「母性」「親子関係」「継承」といったテーマが色濃く表れている。卒業制作である短編映画『La Ventrière』(2021)は、こうした関心が詰め込まれた作品で、フランスのクレルモン=フェラン国際短編映画祭からアメリカのテルライド映画祭まで、世界40以上の映画祭に選出され、10以上の賞を受賞している。監督活動と並行して、複数の脚本にも共同執筆者として携わる。共同脚本を務めた『犬の裁判』(2024/レティシア・ドッシュ監督)は第77回カンヌ国際映画祭ある視点部門に正式出品された。初長編監督作品となる本作は第81回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門にてコンペティション上映され、オーサーズ・アンダー40賞最優秀監督賞を受賞した。

Cast

モナ
ロール・カラミー
Laure Calamy

1975年、フランス・オルレアン生まれ。母は看護師、父は医師。幼いころから演劇に情熱を注ぎ、高校卒業後、フランス国立高等演劇学校(CNSAD)に入学。2001年に卒業後、舞台で活躍を始める。2009年、ブリュノ・ポダリデス監督の『公共のベンチ(ヴェルサイユ右岸)』(日本劇場未公開/配信中)でスクリーンデビュー。ギヨーム・ブラック監督の『女っ気なし』(2011)で注目を集める。2015年、TVシリーズ「エージェント物語」(シーズン1〜4/配信中)でノエミという型破りなキャラクターを演じ、一躍人気に火がつく。主な出演作に『パパは奮闘中!』(2018/ギョーム・セネズ監督)、『アンティークの祝祭』(2018/ジュリー・ベルトゥチェリ監督)、『愛欲のセラピー』(2019/ジュスティーヌ・トリエ監督)、『悪なき殺人』(2019/ドミニク・モル監督)など多数。主演作『セヴェンヌ山脈のアントワネット』(2020/フランス映画祭2021で上映/キャロリーヌ・ビニャル監督)にて2021年のセザール賞主演女優賞を受賞。『彼女の生きる道』(2021/SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022にてコンペティション上映/セシル・デュクロック監督)で2022年セザール賞ノミネート。『フルタイム』(2021/フランス映画祭2022で上映/エリック・グラベル監督)では、第78回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門最優秀女優賞を受賞、2023年のセザール賞にノミネート。幅広いジャンルで活躍するフランスを代表する俳優の一人。

ジョエル
シャルル・ペッシア・ガレット
Charles Peccia Galletto

1995年、フランス・パリ生まれ。障がいを持っている俳優。舞台や映像作品で活躍。俳優のレイモン・アクアヴィヴァが創設した演劇学校(Cours Acquaviva - Les Ateliers du Sudden in Paris)で演技を学び、2019年に初舞台を踏む。2022年、短編映画『De père en fils(原題)』に出演。ほか出演作に『AVI(原題)』(2022/短編)、『Elle & lui & le reste du monde(原題)』(2024)など。本作の演技で第7回 エル・グウナ映画祭スペシャルメンション受賞。また障がいを持つ俳優としてはじめてセザール賞有望若手男優賞の一次候補16人に選出された。

オセアン
ジュリー・フロジェ
Julie Froger

障がいがあり、劇中と同様なフランスの職業作業所(ESAT)で働いている。これまで演技経験はなく、施設内で行われた即興ワークショップで見出され、本作に参加。音に敏感でノイズキャンセリングのヘッドホンがかかせない。

フランク
ヘールト・ヴァン・ランペルベルフ
Geert Van Rampelberg

1975年、ベルギー・アッセ生まれ。1998年にベルギーの俳優養成校スタジオ・ヘルマン・テールリンクを卒業。卒業後、クラスメート数人とともに劇団「オランピック・ドラマティック」を設立する。1997年にTVデビューを果たし、それ以来、ベルギー国内で数々のドラマシリーズに出演。2003年には、ベルギーのカルト的ヒット作『ザ・ヒットマン』(2003/日本劇場未公開・配信中)で映画デビュー。以降、映画・テレビ・舞台・声の仕事で活躍。ベルギーでもっとも需要の高い俳優のひとりとして観客に愛される。2012年には、『Time of My Life(英題)』(2012/日本劇場未公開)での力強い演技が評価され、オーステンデ映画祭で最優秀男優賞を受賞。同年、第86回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作『オーバー・ザ・ブルー・スカイ』(2012/フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン監督)にも出演した。2018年には、ベルギーの注目ドラマシリーズ『De infiltrant(原題)』で主演を務め、国内での地位を確固たるものにする。母語であるオランダ語に加え、フランス語・英語を流暢に話し、近年では国際的にも活躍の場を広げている。

Review

繊細で心を動かすポートレイト


Le Journal du Dimanche

感情のパレットの奥深くまで踏み込む


Les Inrockuptibles

主人公は単なる「勇気ある母親」ではない。

迷いや昂る感情を持つ等身大のヒロインだ。


Le Parisien

美しい脚本。あふれ出す深い共感が絶えず観る者の胸を打つ。


Dernières Nouvelles d'Alsace

ひとつひとつの息づかいが

「変わろう、愛そう、生きよう。」と囁いているようだ――


Le Dauphiné Libéré

Comment

※順不同・敬称略

愛、自己犠牲、共依存、解放、孤独、、、。

人間の最も深い感情が、極限の状態に身を置く演技によって、力強くも繊細に立ち上がります。フランスに来て以来、私の永遠のテーマと重なり、胸の奥が何度も揺さぶられました。私はこの監督と俳優の作品を、生涯追い続けたい。

雨宮塔子
フリーアナウンサー、エッセイスト

この世界は、母親が「命の責任」という重力から逃れることを許さない。そうして女はいつしか、その重みごと「私」になってしまう——。重力に壊されずに、命も自分自身も守るには?その答えが息子に手渡されるまでの、95分間の旅路だった。

瀧波ユカリ
漫画家、パブリックスピーカー

たった一人の息子と、二人きりで生きてきた母親の、愛と疲労が入り混じる静かな呼吸。やがて我が子は恋をし、命を授かる。守り続けてきた手が、いつしか縛る手に姿を変える。家族という近さゆえの葛藤を通して「他者の人生に触れること」の重さを、観る者の心にそっと沈めてくる。

呉美保
映画監督

息子から片時も目を離さず過ごしてきたモナの、張り詰めてきた長い時間を思う。その子から贈られた「何ごとにも時がある」という言葉と繋がれた命は、母の役割からモナを解放するとともに、誰の人生をも少し救ってくれる。

松尾亜紀子
エトセトラブックス代表、編集者

「女性の作り手が増えると、彼女たちの視線が反映されて、より映画が多様に、豊かになります」と口にするたびに、そうすると良作が増えてお得ですよ!みたいに聞こえて嫌だなあと思っていたんです。でもこうやって『私のすべて』のような、女性の人生の大切な出来事を丁寧に映し出した、素敵な映画に出会って、夜の海や喫煙所のシーンを観たら...、やっぱり女性の作り手をもっともっと!と思っちゃいました。

近藤香南子
第38回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメント部門イベントプロデューサー

私自身、我が子が自覚以上に「私のすべて」と感じることがある。子どもが落ち込めば一緒に沈み、幸せを願うあまり先回りし備え、それが的外れになることも多い。状況は違えど主人公の子離れという喪失と再構築にもがく姿に共感し、泥臭さが美しく見え、全ての母に「私だけじゃない」と寄り添ってくれる物語だと感じた。

とげとげ。
漫画家、ラストレーター

卒母の時期は親も子も、それぞれが自分自身と向き合う、人生の曲がり角にあり、止まっていた「親の時計」と「子の時計」、それぞれの時間が動き出す、確かな成長と変化の時期である。親亡き後の子どもの人生をつなぐには、子どもの時計を能動的に動かすことが大事だと思う。

田中千絵
デザイナー、NPO法人Chou・chou理事+東京支部ディレクター
※劇場用パンフレットへの寄稿より抜粋

母になるとは、凄まじいことだなと思う。「母親」に向けられる世間からの視線や重圧は、父親よりも何重にも、重く、鋭くなるように思える。
子育ては、 常に社会全体の問題だ。子どもがいない私も、「母親らしくしろ」「母親なんだから」 そんな空気に加担しない、「母親を抑圧しないこと」はできるのではないかと思っている。

ヒオカ
ライター
※劇場用パンフレットへの寄稿より抜粋・再構成