Rebecca Zlotowski
レベッカ・ズロトヴスキ
監督
1980年4月21日、パリ生まれ。エコール•ノルマル•シュペリュール(ENS/最難関の高等師範学校)とフェミス(フランスが誇る国立映画学校)を卒業。00年代半ばより脚本家として活動をはじめる。何本か短編を撮った後、長編監督デビューの『美しき刺』(10)がカンヌ国際映画祭批評家週間部門に出品の他、ルイ・デリュック賞新人作品賞を受賞。主演のレア・セドゥがセザール賞有望若手女優賞にノミネートされる。第2作『グランド・セントラル』(13)はカンヌ国際映画祭ある視点部門に出品、フランソワ・シャレ賞を受賞の他、ウィーン国際映画祭で国際映画批評家連盟賞、カブール・ロマンチック映画祭でグランプリを受賞した。ナタリー・ポートマンとリリー=ローズ・デップ主演の『プラネタリウム』(16)はヴェネチア国際映画祭に正式出品、『わがままなヴァカンス』(19)はカンヌ国際映画祭の監督週間でSACD賞受賞。『Les enfants des autres』(22)がヴェネチア国際映画祭コンペ部門出品、リュミエール賞で主演のヴィルジニー・エフィラが最優秀女優賞を受賞した。
人にはインティマシーと呼ばれるプライベートな領域があり、個人が知る自分と他人から見た印象にはギャップがあるものです。もちろんインティマシーの対極である仕事や社会でみせる顔にも実は人間の多くの矛盾が絡み合って存在しています。
昔からの知人であるアンヌ・ベレストが、一本の脚本を持ちこんでくれました。タイトルは『リリアン・シュタイナー』。主人公は同名の精神分析医で、物語は自殺したひとりの女性患者をめぐって展開します。
早い段階で、この精神分析医の人物像がはっきりと見えてきました。彼女は担当患者の死に強い責任を感じ、かつての夫を巻き込んで、もしかすると殺人だったのではないかと、真相を探り始めるのです。
主人公リリアンを体現できるのは誰か、私の中で自然に思い浮かんだのが、ジョディ・フォスターでした。待ち焦がれていた出会いです。というのも、私の初の長編監督作『美しき棘』(2010)の制作時に、レア・セドゥの母親役を彼女にオファーしたいと思いましたが、その出会いは実現しませんでした。
今回は、彼女の完璧なフランス語とアメリカ人としてのバックグラウンドが、この映画の中で交わされる言葉のニュアンスに豊かな奥行きをもたらしてくれると感じました。
しかも、ジョディは顔の表情だけで、思考の動き、真実に気づく過程を的確に表現できる俳優です。彼女ほどのハイレベルを私は他に知りません。カメラは、彼女の知性が高速で、めまぐるしく思考するさまを、そのまま捉えています。
そして忘れてはならない重要な存在がダニエル・オートゥイユです。本来、出会うはずのない二大陸を代表する二人が、スクリーン上で出会うという、映画ならではのカップルをジョディとともに出現させました。
この二人が演じる姿に私は一瞬にして胸を打たれました。常に穏やかさに満ち、知性に裏打ちされた演技、そして二人の間に感じられる明らかな信頼関係、その様子はまるでそれぞれの輝かしいフィルモグラフィーが、対話を交わしているかのようでした。それはまさに映画の醍醐味なのです。