Rebecca Zlotowski
レベッカ・ズロトヴスキ
監督
1980年生まれ、フランス出身の映画監督・脚本家。パリの名門映画学校ラ・フェミスで学び、在学中から脚本家として才能を発揮する。長編デビュー作『美しき棘』(2010)は第63回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に出品され、高い評価を獲得。ルイ・デリュック賞で新人作品賞を受賞。続く『グランド・セントラル』(2013)は同映画祭「ある視点」部門に出品されフランソワ・シャレ賞を受賞、国際的な注目を集めた。その後も、『プラネタリウム』(2016)、『わがままなヴァカンス 裸の女神』(2019)など、女性の欲望やアイデンティティ、ユダヤ的ルーツ、無意識の領域といったテーマを、知的かつ遊び心ある語り口で描き、現代フランス映画界を代表する作家の一人として、国内外で高い評価を受けている。
人にはインティマシーと呼ばれるプライベートな領域があり、個人が知る自分と他人から見た印象にはギャップがあるものです。もちろんインティマシーの対極である仕事や社会でみせる顔にも実は人間の多くの矛盾が絡み合って存在しています。
昔からの知人であるアンヌ・ベレストが、一本の脚本を持ちこんでくれました。タイトルは『リリアン・シュタイナー』。主人公は同名の精神分析医で、物語は自殺したひとりの女性患者をめぐって展開します。
早い段階で、この精神分析医の人物像がはっきりと見えてきました。彼女は担当患者の死に強い責任を感じ、かつての夫を巻き込んで、もしかすると殺人だったのではないかと、真相を探り始めるのです。
主人公リリアンを体現できるのは誰か、私の中で自然に思い浮かんだのが、ジョディ・フォスターでした。待ち焦がれていた出会いです。というのも、私の初の長編監督作『美しき棘』(2010)の制作時に、レア・セドゥの母親役を彼女にオファーしたいと思いましたが、その出会いは実現しませんでした。
今回は、彼女の完璧なフランス語とアメリカ人としてのバックグラウンドが、この映画の中で交わされる言葉のニュアンスに豊かな奥行きをもたらしてくれると感じました。
しかも、ジョディは顔の表情だけで、思考の動き、真実に気づく過程を的確に表現できる俳優です。彼女ほどのハイレベルを私は他に知りません。カメラは、彼女の知性が高速で、めまぐるしく思考するさまを、そのまま捉えています。
そして忘れてはならない重要な存在がダニエル・オートゥイユです。本来、出会うはずのない二大陸を代表する二人が、スクリーン上で出会うという、映画ならではのカップルをジョディとともに出現させました。
この二人が演じる姿に私は一瞬にして胸を打たれました。常に穏やかさに満ち、知性に裏打ちされた演技、そして二人の間に感じられる明らかな信頼関係、その様子はまるでそれぞれの輝かしいフィルモグラフィーが、対話を交わしているかのようでした。それはまさに映画の醍醐味なのです。